「現金は効率が悪いから、必要になったらその時に株を売ればいい」
独身時代の私はそう考え、生活防衛費をほとんど持たずに海外株を中心とした「全力投資」を続けていました。ロジックとしては合理的かもしれません。しかし、人生の大きなイベントが重なったとき、当時の自分の見通しの甘さを痛感することになりました。
1. なぜこのタイミングで?重なったイベントと判断ミス
今振り返れば、当時の私はあまりに無計画でした。
結婚という人生の大きな節目が間近に迫っていることを自覚していたはずなのに、あろうことかその直前に「車の買い替え」を強行してしまったのです。
「なんとかなるだろう」という根拠のない自信は、すぐさま打ち砕かれました。当然、まとまった現金が必要になりますが、手元にあるのはわずかな生活費のみ。私は泣く泣く、保有していた海外株をいくつか売却し、現金化してその場を乗り切るしかありませんでした。
投資を始めた当初の自分は、「必要になったら現金化して使う。それが資産の役割だ」と100%割り切っていたつもりでしたが、いざその時が来ると心境は穏やかではありませんでした。
2. 理屈ではわかっていても、消えない「もやもや」
本当の試練は、現金を支払った後にやってきました。
私が手放した銘柄のいくつかが、売却した直後から皮肉なほど大きく値上がりを始めたのです。
- 「なぜ、あの時あっちの銘柄じゃなくて、こっち(爆伸びした方)を売ってしまったのか……」
- 「もし結婚というイベントを予期して、車の購入を1年遅らせていたら……」
頭では「あの時は現金が必要だったのだから、売却は正解だった」と自分に言い聞かせました。しかし、画面上でグングン伸びていくかつての保有銘柄を見るたびに、「自分の不甲斐なさ」と「もやもや」とした感情が、何ヶ月も胸に居座り続けました。
3. 「感情はロジックに従わない」という教訓
この経験から学んだのは、投資において感情は必ずしもロジックに従わないということです。
「全力投資で、必要なら売る」という戦略は、エクセルのシミュレーション上では効率的かもしれません。しかし、実際に「売りたくないタイミング」で売らざるを得ない状況、それも上昇局面での強制的な売却を経験すると、想像以上に精神的なダメージを負います。
もし、自分に十分な「生活防衛費」があったなら、あんなに悔しい思いをして銘柄を手放さずに済み、新婚生活ももっと晴れやかな気持ちでスタートできていたはずです。
結論:生活防衛費は「投資判断を狂わせないための盾」
生活防衛費(現金)の役割は、単に生活を支えるだけではありません。「売りたくない局面で、無理に売らなくて済むようにすること」、つまり自分の投資判断と「投資し続けるメンタル」を守るための「盾」なのです。
「自分は合理的に割り切れる」と思っていても、人間である以上、後悔という感情は後から必ず追いかけてきます。
- ライフイベントが少しでも予見できるなら、現金の比率を過剰なほど多めにする。
- 投資効率だけでなく、「数年後の自分が後悔しないための防衛ライン」を引いておく。
これから投資を始める方、あるいは「フルインベストメントこそ正義」と考えている方に、私のこの苦い経験が少しでも参考になれば幸いです。

